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きわみ 2007.03.12
九谷焼「三十六歌仙茶器」の夫婦湯呑みは、60年以上前の商品。
現在だとちょっと値段をつけるのが難しい。全て手で描かれていて、
湯飲みの中に書いてある文字までも手書き。圧倒されてしまう程の豪華さだ。

骨董品の魅力とは何だろう。何十年、何百年の時を経て今ここにある品物を手に取った瞬間に伝わる、歴史や作者の想い。そんな感覚を得るからこそ、もっと深く知りたいという想いが沸いてくる。

昭和10年からお店を始めている「十銭屋」にも、そんな骨董品の数々が眠っている。倉庫に大切に置いてある品々の中から、奥様が見せてくださったのが「三十六歌仙茶器」という九谷焼の夫婦湯呑み。「昭和初期、大体60年以上前のものかしら・・・。」と言う。

全て手で描かれた湯呑みはとても豪華で美しく、手に取って見るのも緊張してしまうほどである。「三十六人撰」に名をはせた様々な歌人が描かれているであろう湯呑みの周りは、実に繊細で人物の表情や着物の絵柄まで忠実に描かれている。そして何より色使いがとても鮮やかで、思わず魅入ってしまう。中に描かれた文字ももちろん手書きで、内容は定かではないが、とても細かく正確に書かれた文字を見ていると、「どのようにこんな細かい文字を湯呑みの中に書いたのだろう・・・。」と想像力をかきたてられる。今ではちょっと値段をつけることが難しい作品だ。

そしてもう一種類、赤山水が描かれた湯呑みもまた、シンプルながらも綺麗で存在感があり見惚れてしまう。「昔はよく問屋が『良いものがあるから買ってくれ』と言って売りに来ていたのよ。」

こう話す奥様は、今も昔も良いものというのは自分の目で見て確かめている。

どちらも倉庫で保管しているのが惜しいくらい美しい代物だが、飾る事も恐れ多い気がする・・・。そんな事を感じさせる骨董品である。


信楽焼の「夫婦たぬき」。とても可愛らしくて微笑ましい。 赤山水が描かれた湯呑み。こちらも貴重なひとしなである。
十銭屋の2代目ご主人。何十年もこの店を守り続けている。 様々なグラスが種類豊富に取り揃う。
店内を歩いているとあまりの商品の多さに、時間を忘れるほど夢中になって探してしまう。食器はもちろんのこと、置物や花瓶骨董品などとにかく何でも揃っているので、きっとお気に入りの一品を見つけることが出来るだろう。

十銭屋の店内には数え切れない程の商品が並んでいる。食器を中心とし、置物や日用雑貨まで幅広い。そんな中を歩き回りながら、自分のお気に入りを見つける時間は何とも楽しい。「好きな人は天井から床まで見ていくし、興味が無い人は一周して帰っていっちゃう。」と奥様は話してくれたが、これだけ品数が豊富だと、例えあまり興味を持っていない人でも、知らぬ間に引き込まれてしまうのではないだろうか。

「外国人のお客様は結構来店してくれて、徳利とか盃とか買っていったり、今は若い人が昔風のお皿を買っていったりするのね。」と奥様は言う。

面白い物を見つけにお店に一度足を踏み入れたら、病み付きになってしまうかもしれない。


十銭屋は1935年に先代が現在の場所にお店を開いた。今は2代目のご主人が後を継いで、お店を守っている。2代目ご主人が「私の両親は静岡で農業をしていたんだよ。でもずっと商売がしたくて東京に修行に出たの。」と語ってくれた。東京で先代が修行を重ね、7,8年が過ぎた頃に店を出す事になり、東京から近い水戸に出す事に決めた。先代は、水戸駅に降り立った時に「ここでやりたい」と感じたそうだ。

十銭屋の名前の由来は、

「修行先から暖簾分けをしてもらう時に、『山田屋』か『十銭屋』かを選ぶ事になった。あの時代は十銭が物を言う時代。十銭持っていれば自転車の荷台にいっぱい詰めるほど買えた。今で言う100円均一みたいなものだね。だから十銭屋にしたらしいよ。」との事らしい。

当初は全国に「十銭屋」という名のお店があったそうだが、他の店は次々と名前を変え、この名前を現在まで残しているのは、ここ泉町にある「十銭屋」くらいだという。

店の名前を守り続ける難しさを改めて感じた。


「今はお皿が必要なくなってきているね・・・。スーパーで売っている発泡スチロールに乗せられた料理をそのまま食卓に出したりもしている。食の在り方も変わってきたし。寂しいよね。」と話すご主人。どんな人でも綺麗なお皿に盛られた料理を見たら、幸せな気分になるのではないだろうか。それだけでより美味しく感じる事が出来るのでないだろうか。

人間が人生を楽しむ為には「食」は重要な要素の一つである。十銭屋の食器に、その楽しみを見つけられたら素敵である。



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