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きわみ 2006.09.25
Crouteこだわりのフランスパン。
「バタール」¥210。「バゲット」¥190。
人気商品なので売り切れる前に電話で予約注文をするのもアリ。
2つの別々の味と食感をぜひ楽しみながら食していただきたい。

泉町2丁目西口通り。大きく聳え立つ京成の脇道を歩くと、1件のおしゃれで小さな店がある。「Croute」という看板と共に目に入る店内のおいしそうなパン。その香ばしい匂いに誘われて自然に扉を開けてしまう。

フランスパンというと、フランス料理などでよく見かけるものであり、日本人の私達が普段食するものとしては、食パンの方に馴染みがあるのではないだろうか。

毎日色々なパンを作り、お客様に喜びを与えている「Croute」の店長大野さんは、パンの中でも特にフランスパンにこだわりを持っている。「バゲット」と「バタール」、作り方はもちろん、味・歯ごたえも全く違う。同じフランスパンでも2通りの味わいを楽しむことが出来るのである。

まずバゲット。フランス小麦を使用している。焼きあがると皮がカリっとして、まさにおせんべいのような食感に仕上がる。フランス小麦は他の小麦に比べるとたんぱく質が少ない。国産の小麦粉は11%〜のたんぱく質だが、フランス産は8%〜という少なさで、その分旨味成分がたっぷり含まれている。そして、その生地を今度は低い温度で16時間じっくりと熟成させる。そうすることで糖の分解を抑え、甘みが残り、サックリした食感が出るのだ。

次にバタール。カナダ産小麦を使っている。バゲットほどの硬さがない為、皮はサクっと、中はふっくらしていて食べやすいのが特徴である。生地自体は2〜3時間寝かせるのだが、この生地を前の日に作った生地に足すというのだ。「うなぎのタレのようなものです」と大野さん。その言葉を聞いた瞬間思わず、「なるほど」という深い納得の言葉がこぼれた。


食パンは3種類。全粒粉の食パンもヘルシーでオススメ。 「大正浪漫硝子」も販売している。花瓶やグラスなど素敵なものばかり。
店長の大野さん。優しさと温かさが滲み出ている方だ。 菓子パンも調理パンも見ているだけで幸せな気分になる。
対面販売をすることでもっともっとお客様と近づいて、一人一人と接することが出来る。アットホームな店内は、パンの香ばしい匂いと共に、とても穏やかな空気が流れる。

「パンというのは生地の熟成が一番大事だと思います」そう語る大野さん。フランスの伝統的な作り方で一から生地を作る。温度や場所、季節や水などちょっとした環境の変化でも小麦の乾燥の仕方が変わったり、ボリュームが少なくなるなど、パン自体にそのまま影響を及ぼす。そのような情況も全て考え、大野さんは毎日生地と向き合い一つ一つ丁寧に作業をする。

菓子パンは砂糖とバターを多くして甘みを出す。調理パンは、具材を生かせるように甘くもしつこくもなく、シンプルな生地にする。バターの代わりにオリーブオイルを使ってあっさりと仕上げるのだ。食パンに関しては牛乳と砂糖の代わりに練乳を使い、しっとり感を引き出す。

それぞれのパンの特徴を考え、それに合ったものを日々の作業の中で見つけ出す。そして大野さんの力強い想いと一緒に最高の生地を作り上げるのである。

私達が何気なく手に取り、口にするパンには、職人の愛情が込められているのだということを強く感じた。


「このお店の一番人気は何ですか?」と聞いてみた。店頭には、フランスパンや食パンを始め、子供や女性が喜ぶ菓子パンや、食事の代わりにもなってしまうようなボリュームのある調理パンなどが並んでいる。その中で最も人気があるパンはどれなのか?非常に興味深い。

大野さん曰く「どれが一番人気ということは無いです。その日によって作るものも違うので、『この前買ったあのパン、おいしかった!今日はないの?』と聞かれることもしばしば。『朝の気分や天気によって、今日はこんなのにしてみようかな・・・』と考えながら作ることがほとんどなので、前に作ったものを忘れてしまったり、一日だけしか店頭に出なかったパンなどもあるんです」そう笑いながら話す大野さんの手は、小麦の粉で真っ白だった。美味しさと幸せを私たちに提供する為の努力を、その手が示していた。


23歳の時にパン屋に就職をした大野さんは、会社組織のパン作りから抜け出し、全て自分の手で好きなパンを一から作る為にこのクルートという店を開いた。対面販売にした理由も、「お客様に直接自分が作ったパンの説明が出来るし、会話も出来る。お客様の声も聞ける。ただ買うだけではなく、その後のコミュニケーションも大事にしたい」という彼の温かさからである。

毎日同じ作業なのにプロセスや結果が違う。中身が同じでも形が違う。こんな風にパンのおもしろさを知ることが出来た大野さんの次なる想いは、「ただおいしいパンを作るだけではなく、こんなパンの食べ方もある」と、パン単体ではなく、さらに魅力的な食し方を伝えていくという事だ。特に、料理とフランスパンの組み合わせを楽しんでもらいたいと考えている。

毎日違う顔を見せるパン。その顔を作っている大野さんからは、一直線に前だけを見つめる強い意志が感じられた。

「Croute」で生まれる様々な表情を持ったパンが、今日も街を見ている。